2012年11月5日月曜日

成年被後見人の特別障害者控除の適用について

別紙1 照会の趣旨


静岡県社会福祉士会では、成年後見制度の下、後見開始の審判の申立てがあった者について家庭裁判所から成年後見人の候補者の推薦依頼を受け、専門職成年後見人として社会福祉士を推薦しているところです。

 ところで、この成年後見制度における成年被後見人とは、家庭裁判所において「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判を受けた者をいいますので(民法7、8)、家庭裁判所から後見開始の審判を受け、社会福祉士が成年後見人としてその事務を行うに当たり、成年被後見人は、所得税法上、特別障害者として障害者控除の適用があるのではないかとの疑義が寄せられておりますので、その適用があると解してよいか照会します。

別紙2 照会に係る取引等の事実関係

成年後見制度とは、認知症、知的障害及び精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない者について、本人の権利を守る援助者(成年後見人)を選ぶことで、成年被後見人を法律的に支援する制度で、次のとおりとなっています。

1 後見開始の審判等

 「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができることとされ(民法7)、後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付すこととされています(民法8)。

 そして、成年後見人は、成年被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について成年被後見人を代表し(民法859)、成年被後見人が病気などから回復し判断能力を取り戻したり、あるいは亡くなったりするまでの間、その責任を負うこととなります。

2 家庭裁判所による鑑定

 家庭裁判所は、後見開始の審判をするには、本人の精神の状況について医師その他適当な者に鑑定をさせなければならないこととされ(家事審判規則24)、裁判所が指定した鑑定人により鑑定が行われることになりますが、鑑定人となる者は、本人の精神の状況について医学上の専門的知識を用いて判断されることから、それにふさわしい者(専門的な知見を有する医師)が選任されます。

 鑑定内容は、最高裁判所事務総局家庭局が示している「成年後見制度における鑑定書作成の手引」により示された「鑑定書記載ガイドライン」によると、精神上の障害の有無、内容及び障害の程度、自己の財産を管理・処分する能力、回復の可能性などにつき、精神医学的診断及び能力判定等が行われます。

(注) 後見開始の審判の内容等は、後見開始の審判がされたときに、その裁判所書記官の嘱託に基づき後見登記が行われますので、法務局が発行する登記事項証明書により確認することができます。

別紙3 照会者の求める見解となることの理由

所得税法上、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は特別障害者とされ(所法2二十九、所令10一)、居住者又は控除対象配偶者若しくは扶養親族が特別障害者である場合には、40万円の障害者控除が認められています(所法79)。

 この「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」について、所得税法に特段の定義はなく、民法第7条に定める「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」と同一の用語を用いていることから、家庭裁判所が、鑑定人による医学上の専門的知識を用いた鑑定結果に基づき、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」として後見開始の審判をした場合には、所得税法上も、成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当し、障害者控除の対象となる特別障害者に該当すると考えられます。

 この点、現行の所得税法の規定が、「民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成11年12月8日法律第151号)」により、「民法の一部を改正する法律(平成11年12月8日法律第149号)」による民法の改正に併せて改正されていることからも、民法に定める「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」は、所得税法に定める「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当すると考えられます。

 なお、後見開始の審判の事実は、上記2の(注)のとおり、登記事項証明書により確認することができます。

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回答年月日 平成24年8月31日

回答者        名古屋国税局審理課長

回答内容

 標題のことについては、ご照会に係る事実関係を前提とする限り、貴見のとおりで差し支えありません。 ただし、次のことを申し添えます。


(1) この文書回答は、ご照会に係る事実関係を前提とした一般的な回答ですので、個々の納税者が行う具体的な取引等に適用する場合においては、この回答内容と異なる課税関係が生ずることがあります。

(2) この回答内容は名古屋国税局としての見解であり、照会者の構成事業者等の申告内容等を拘束するものではありません。    
国税庁HP http://www.nta.go.jp/nagoya/shiraberu/bunshokaito/shotoku/120831/01.htm#besshi1     


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2012年10月21日日曜日

為替デリバティブ取引の金融ADRについて


1 ①全国銀行協会と②証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)の金融ADRが活用されている。

2 金融ADRは,手続が非公開。

3 金融ADRは,裁判と異なり,事実認定の手続やそれに基づく法律判断は行わない。

4 全国銀行協会の金融ADRは,原則として1回の期日で終了。

5 全国銀行協会と証券・金融商品あっせん相談センターのどちらか一方で金融ADRが不調になった場合,他方に金融ADRを申し立てることはできない。

6 なお,銀行の投資信託販売は,金融ADRでは解決しない可能性が非常に高い。


金融法務事情1951号 「デリバティブ取引の現状と課題」 参照


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2012年10月13日土曜日

成年後見人と親族相盗例に関する判例(準用否定)

 *成年後見人が成年被後見人の財産を横領した場合は,成年後見人が成年被後見人の養父であったとしても,親族相盗例は準用されず,業務上横領罪は免除されない。

成年後見人が成年被後見人の養父であっても,業務上横領罪の量刑上斟酌されない。

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業務上横領被告事件

裁判年月日 平成24年10月09日  最高裁判所第二小法廷  決定

結果 棄却 

裁判要旨 1 

家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,刑法244条1項は準用されない


2 家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合,成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があることを量刑上酌むべき事情として考慮するのは相当ではない


最高裁判所HP
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82627&hanreiKbn=02


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2012年7月29日日曜日

バリアフリー改修を行った住宅に対する固定資産税の減額措置

バリアフリー改修を行った住宅に対する固定資産税の減額措置



 平成25年3月31日までに、一定の要件を満たすバリアフリー改修工事を行った住宅(併用住宅については居住部分が2分の1以上のもの)については、翌年度分の固定資産税が減額されます。なお、省エネ改修工事を行った住宅に対する減額措置との同時適用は可能ですが、新築住宅等、その他の減額措置を受けている住宅については適用されません。


 また、この減額措置の適用は1回限りです。

要件

1.平成19年(2007年)1月1日以前に建築された住宅であること。


2.次のいずれかの方が居住する既存の住宅であること(賃貸住宅部分は除きます)。


ア 65歳以上の方


イ 要介護認定又は要支援認定を受けている方

ウ 障がいのある方


 3. 以下の工事で、自己負担金額が30万円以上であること(補助金等が支給された場合は、当該金額を控除した額)。なお、かっこ内に示す工事は代表的な例を示しています。


ア 廊下の拡幅(介助用の車いすで移動するため通路又は出入り口を拡幅すること)

イ 階段の勾配の緩和

ウ 浴室の改良(浴室を広くする、浴槽の出入りを容易にすることなど)


エ トイレの改良(広くする、洋式にする、便座位置を高くすること)

オ 手すりの取り付け


カ 床の段差の解消(段差をなくす、スロープを取り付けること)

キ 戸の改良(引き戸・折戸にする、ドアノブをレバーハンドルにすることなど)

ク 床表面の滑り止め化

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2012年7月28日土曜日

バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)

バリアフリー改修工事をした場合(住宅特定改修特別税額控除)


一定の居住者が、自己が所有している居住用家屋について高齢者等居住改修工事等(以下「バリアフリー改修工事」といいます。)を行った場合において、

当該家屋を平成21年4月1日から平成24年12月31日までの間にその者の居住の用に供したときに、

一定の要件の下で、そのバリアフリー改修工事に要した費用の額とそのバリアフリー改修工事の標準的な費用の額のいずれか少ない金額(平成24年分は最高150万円(平成21年分から平成23年分は最高200万円))の10%に相当する金額をその年分の所得税額から控除するものです。



 なお、原則として平成23年分でこの税額控除を適用した場合は、平成24年分において適用できません。
 
国税庁HP
http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1220.htm
 
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2012年7月10日火曜日

被保佐人の預金の払戻しと金融機関への届出

預金規定上の届出義務が履行される前に生じた損害について金融機関が責任を負わない旨の条項に基づく免責の主張が認められた事例

東京高等裁判所平成22年12月8日第12民事部判決
原判決取消し・請求棄却
(上告・上告受理申立て後,上告棄却・不受理決定)
金融法務事情1949号115頁

【判決要旨】

家庭裁判所の審判により補助・保佐・後見が開始された場合には直ちに成年後見人等の氏名その他必要な事項を書面によって届け出るよう求め,

この届出前に生じた損害について金融機関は責任を負わない旨の預金規定の条項は,

被保佐人等の保護と取引の安全の調和を図るための合理的な定めとして有効であり,

被保佐人はこの届出をしない間に行った預金の払戻しを取り消すことができない。


【事案の概要】

Xは,平成19年5月,精神疾患のため,保佐開始の審判を受けた。

Xは,保佐開始の審判後,Xの保佐人Aの同意を得ることなく,複数回にわたりY金融機関の口座から預金を払戻した(払戻金額の合計約420万円)。

Xは,平成20年6月,Yに対して,保佐開始の審判を受けたことを届け出た。

Xは,平成20年7月,Yに対して,代理人弁護士を通じて,平成19年6月から平成20年5月までのYの口座からの預金の払戻行為をすべて取り消す旨の意思表示をした。

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2012年6月29日金曜日

精神科へ強制入院、家族同意不要に…厚労省方針

精神科へ強制入院、家族同意不要に…厚労省方針



統合失調症や認知症などの人を強制的に精神科に入院させる「医療保護入院」について、厚生労働省は29日、入院時に義務づけられている家族の同意を不要とする方針を決めた。



 家族の同意を外すのは、現行制度の原型を定めた1900年の法制定以来初めて。また、入院中も患者の権利を擁護するため、患者が「代弁者」を選べる新たな仕組みの導入などを盛り込んだ、精神保健福祉法改正案を来年の通常国会に提出したい考え


 医療保護入院は、入院治療の必要性を本人が理解できない場合、精神保健指定医の資格を持つ医師1人の診断と、家族(保護者)の同意で入院を強制できる制度。1年間で精神科に入院する約38万人のうち、14万人が同制度で入院している。

(2012年6月29日20時44分 読売新聞)

読売新聞HP
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120629-OYT1T01128.htm?from=main6

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2012年5月1日火曜日

銀行窓口で勧誘された一時払い終身保険に関するトラブル-高齢者への不適切な勧誘が急増中-

銀行窓口で勧誘された一時払い終身保険に関するトラブル-高齢者への不適切な勧誘が急増中-



国民生活センター HP
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20120419_1.html
 
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2012年3月29日木曜日

成年後見人の横領と国家賠償法に関する下級審判例

事件番号 平成22(ネ)450 事件名 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日 平成24年02月20日 裁判所名・部 広島高等裁判所  第4部 

原審裁判所名 広島地方裁判所 福山支部 原審事件番号 平成21(ワ)252 

 判示事項の要旨 

1 成年後見人が被後見人の財産を横領した場合において,家事審判官による成年後見人の選任や後見監督が,被害を受けた被後見人との関係で国家賠償法1条1項の適用上違法となるのは,具体的事情の下において,家事審判官に与えられた権限を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合に限られる。



2 成年後見人らが被後見人の預金から金員を払い戻してこれを着服するという横領を行っていたにもかかわらず,これを認識した家事審判官が更なる横領を防止する適切な監督処分をしなかったことが,家事審判官に与えられた権限を逸脱して著しく合理性を欠くと認められる場合に当たるとされた事例


最高裁判所HP 
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82152&hanreiKbn=04


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2012年3月24日土曜日

後見制度支援信託

後見制度支援信託制度とは,

成年後見人,未成年後見人による本人の財産の使い込み(横領)を

防ぐために設けられた制度です。


(1)後見制度支援信託の対象財産は,

金銭に限ります。


(2)すべての事件において,後見制度支援信託を利用できるわけではありません。

信託銀行に対する手数料の支払いが必要になるので,

金銭が一定額以上の場合に限ります。


(3)家庭裁判所が後見制度支援信託の利用を検討すべきと考えた場合は,

後見人として,専門職(司法書士,弁護士など)を選任します。

専門職後見人が信託銀行と信託契約を締結します。

信託契約締結後,専門職後見人は辞任し,親族後見人が選任されます。


(4)後見制度支援信託を利用した場合,

信託した金銭を払い戻すには,家庭裁判所の指示書が必要になります。



詳しくは最高裁HP
http://www.courts.go.jp/vcms_lf/30404002.pdf


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2012年2月15日水曜日

平成22年介護サービス施設・事業所調査結果の概況

平成22年介護サービス施設・事業所調査結果の概況


厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/service10/index.html




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2012年2月2日木曜日

「後見制度支援信託」について

「後見制度支援信託」について

平成23年02月03日



信託協会HP
http://www.shintaku-kyokai.or.jp/news/news230203.html

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2012年1月29日日曜日

家事事件手続法と成年後見開始の申立ての取下げ

◇ メール相談を承ります:相談料5250円(前払い):3回まで回答いたします。相談内容を下記のメールアドレスまで送信ください。 soudann@ishihara-shihou-gyosei.com 

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家事事件手続法が施行されると,

成年後見開始の申立ての取下げが制限されます。

取り下げるためには,裁判所の許可が必要になります。


家事事件手続法


(平成二十三年五月二十五日法律第五十二号)

(申立ての取下げの制限)


第百二十一条  次に掲げる申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができない。

一  後見開始の申立て

二  民法第八百四十三条第二項の規定による成年後見人の選任の申立て

三  民法第八百四十五条の規定により選任の請求をしなければならない者による同法第八百四十三条第三項の規定による成年後見人の選任の申立て

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