2012年7月10日火曜日

被保佐人の預金の払戻しと金融機関への届出

預金規定上の届出義務が履行される前に生じた損害について金融機関が責任を負わない旨の条項に基づく免責の主張が認められた事例

東京高等裁判所平成22年12月8日第12民事部判決
原判決取消し・請求棄却
(上告・上告受理申立て後,上告棄却・不受理決定)
金融法務事情1949号115頁

【判決要旨】

家庭裁判所の審判により補助・保佐・後見が開始された場合には直ちに成年後見人等の氏名その他必要な事項を書面によって届け出るよう求め,

この届出前に生じた損害について金融機関は責任を負わない旨の預金規定の条項は,

被保佐人等の保護と取引の安全の調和を図るための合理的な定めとして有効であり,

被保佐人はこの届出をしない間に行った預金の払戻しを取り消すことができない。


【事案の概要】

Xは,平成19年5月,精神疾患のため,保佐開始の審判を受けた。

Xは,保佐開始の審判後,Xの保佐人Aの同意を得ることなく,複数回にわたりY金融機関の口座から預金を払戻した(払戻金額の合計約420万円)。

Xは,平成20年6月,Yに対して,保佐開始の審判を受けたことを届け出た。

Xは,平成20年7月,Yに対して,代理人弁護士を通じて,平成19年6月から平成20年5月までのYの口座からの預金の払戻行為をすべて取り消す旨の意思表示をした。

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