札幌~簡易裁判所の訴訟,少額訴訟,支払督促
ブログ記載時の法律に基づいています。具体的な事件については,必ず専門家にご相談ください。 司法書士・行政書士・社会保険労務士 石原拓郎
2013年11月19日火曜日
死後事務と葬儀費用(葬式費用)の負担者
(1)葬儀費用(葬式費用)の負担者については,
相続財産負担説,喪主負担説,相続人負担説などがあり,
下級審判例の判断は分かれています。
(2)ところで,死後事務委任(葬儀をすることおよびその費用の支払いなど)に関する判例および下級審判例として,下記のものがあります(結論としては,いずれも,死後事務委任契約を肯定)。
①最高裁平成4年9月22日判決(金法1358号 55頁)は,受任者が知人の事例
②東京高裁平成11年12月21日判決(判タNo.1037 175頁)は,受任者が母,姉と妹の事例
上記の判例および下級審判例は,いずれも受任者が相続人ではないケースです。
しかし,受任者が相続人の場合であっても,死後事務委任契約の成立を否定する理由はないと考えられます。
よって,受任者が相続人の場合であっても,死後事務委任契約の成立は認められるでしょう。
そうすると,被相続人である委任者から,葬儀などの死後事務を委任された相続人の一人である受任者が,
死後事務委任契約に基づいて,被相続人の相続財産のうちから葬儀関連費を支払った場合,
相続財産からの葬儀関連費の支出は有効と考えられます。
その結果,遺産分割は,葬儀関連費を控除した残額の相続財産が対象になります。
ただし,香典は葬儀費用に充当すべきと考えられるので,
葬儀を行った受任者が葬儀費用はまったく負担していないのに,香典を総取りすべきでないのはいうまでもありません。香典は,相続財産に加算すべきでしょう。
なお,死後事務委任契約に関する紛争は,受任者が相続人の場合であれば,遺産分割調停で解決を図ることができますが,調停で合意できない場合は,民事訴訟で解決することになります。
(3)下記の参考文献によると,
上記の判例①および下級審判例②について,
「相続法理との衝突については、判決文で言及していないということも特徴であると言えよう。」との指摘があります。
死後事務委任契約を利用すれば,相続財産負担説と同じようになると考えられますが,
遺留分との関係などで,問題が生じる可能性はあります。
参考文献
高崎経済大学 谷口 聡 准教授 「委任者死亡後の委任契約の効力」(高崎経済大学論集 第52巻 第2号 2009 15頁~27頁)
http://www1.tcue.ac.jp/home1/k-gakkai/ronsyuu/ronsyuukeisai/52_2/taniguchi.pdf
ーーーーーーーーーーーーー
当事務所のHP http://ishihara-shihou-gyosei.com/
登録:
投稿 (Atom)